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もう、いないよ。


「貴方は―――皐月理紗子の模造体です。」

目の前の人物―――と形容するには些か人間離れした容姿をしているが―――に言われた言葉を、私は飲み込めなかった。
ショック等を感じて、という訳では無い。そもそも言っている事の意味が理解出来なかった。

「なん――。」

口元で必死に言葉を紡ごうとするもうまく単語にならず、ただ絡まった糸くずの様に詰まってしまう。
そんな私の様子を尻目に、目の前の女性は言葉を繋ぐ。

「更に言ってしまえば、人間ですらない。貴方は■■■■■■という邪神の落し子なんです。」
「―――。」

糸くずは最早出てこず、代わりと言わんばかりに玉の汗が額に浮かぶ。
今、何て言ってた? 私、は、人間ですらない? その後に発音していた単語も、何? 何なんだ??
追い打ちを掛けるかの如く、彼女は紡ぐ。

「貴方が生まれたのは、およそ一年程前。
 本物の皐月理紗子が一度命を落とした事に起因しています。彼女は随分と気に入られていたみたいですね。
 本来であれば永遠に蘇る事の出来ない所で死んだにも関わらず、貴方という存在を生み出し、その後ご自身も復活なさったんですから。」

私は胸の鼓動がけたたましく跳ねるのを感じる。
理解したくなかった事が、真綿の様に私の首を締める。
あぁ、いやだ。来ないで。分からせないで。

しかし、無情にも彼女は続ける。

「ここ一年、何か違うなと思った事はありませんでしたか? 生活の中で、本当は少し違和感があったんじゃないんですか?」

…確かに、確かにそうだ。
KANOちゃんも魅空も、ここ最近私の知らない記憶の話をしてくる様になっていた。
この前行ったゲーセンの話とか、ゲーム大会の話とか…まるでシャツのボタンを掛け違えたかの様に、
どうにも少し話が合わない事があった。

「――や、―でも…。」

喉から漏れる空気は、例え声の様相を成していても、意味を持たせる事は出来なかった。
乾いた風で乾燥しきった私の心が、ガラガラと端から音を立てて崩れ行くのを感じる。
そんな事を突然突き付けられても、じゃあ、私は、誰なんだ。

「貴方が体験したこの1年間の出来事は本物です。しかし、それ以前の記憶は全て本物の皐月理紗子から共有されたものです。
 …未だにご自分が本物の皐月理紗子では無い、という事が信じられないのであれば…証拠をお見せ致しましょうか?」

いや、いい。とは言えなかった。
知ってしまえばもう元の生活には戻れない。とはいえ既にもう引き返せない所まで来てしまった。
ならば私は、皐月理紗子はどうするだろう。彼女、いや、私は前進する事を選ぶだろう。

「――見せ、て。」

口から漏れる言葉は情けなく、息も絶え絶えだった。
緊張感なんて大会で慣れてた筈なんだけどなぁ。ああ、でもそれも"私"が体験した訳じゃないんだっけ。
そう考えていると、なんだか少しは気分が紛れた。

彼女は少し表情を曇らせると、片手を差し出した。その手の上には何かぼうっと、映像の様なものが浮かぶ。

「これは、今現在の皐月理紗子本人です。」

そこには私――理紗子KANO魅空と共にゲームセンターで遊ぶ姿があった。
クレーンゲームでフィギュアを取ろうとして、皆で楽しそうに笑っている。
そんな3人を見つけ、後ろから勢い良く迫る人物。 皐月凛、姉だ。
姉は理紗子を後ろから驚かせる。すると、クレーンのフックからフィギュアがズリ落ちた。
皐月凛は一瞬、やべっという表情を浮かべ、その場から逃走。理紗子は激昂して姉を追いかけ、それを見たKANO魅空がまた笑う。

なんだか凄く…幸せな光景だな。

そう思った瞬間、私の瞳から玉の涙がボロボロと零れ落ちるのが分かった。
遂に、理解してしまった。
私は理紗子だけど、これはもう、私には手に入らない日常、幸せなんだ。
そう考えると耐えきれなかった。私はなりふり構わず声を上げて泣きじゃくった。

こんなに力強く泣いたのは、本人の私ですら記憶していないが、多分生まれた時以来なんじゃないかな。

幸せな「私」と不幸せな"私"。
なんでこうなっちゃったんだろう。ひどいよ。
"私"だって「私」の人生を歩みたかった。でももう知ったからには二度とこの道は歩めない。
お父さん、お母さん、お姉ちゃんKANOちゃん、魅空。みんな大好きだよ。でも、もう知ったからには皆とは会えないよ。
つらいよ。かなしいよ。

理不尽さに対する想いを何処にぶつければ良いかも分からず、ただただ胸が張り裂ける。
拭っても拭っても、涙はとめどなく溢れてどうしても止まってくれない。

見かねた女性が、沈痛な表情で私を見つめながらも口を開く。

「…私は貴方の力になる事が出来ます。
 勿論貴方が望むのであればですが――貴方の存在をゼロから作り変え、今度こそ貴方に新しい人生を差し上げる事が出来ます。」
 
突飛な提案だった。
しかし、今までの"記憶"から、私は彼女が嘘を言っていない事も分かった。

「おねが、します。こんな気持ちになるな、ら、私、うまれてぎたく、無、かった。」

嗚咽が邪魔をしてマトモに喋る事すら出来ない。とはいえこれは本心だった。
なんとか言葉を紡ぎ、私はみっともなく彼女に懇願した。

なんとなく、彼女がどんな存在なのか、私には理解出来ていた。
プログラムに対してデバッガーがいる様に、彼女はこの世界に対するデバッガーなのだろう。
バグは再修正してリリースする。恐らくそういう事だ。

暫くの後、彼女は静かにただ微笑むと、私の頭を優しく抱いた。
私の身体は、心は、何かとても眩い光に包まれて少しずつ溶けて、霧散していく。
不思議と恐怖心は無かった。きっと、事実を知らずに生きていく方がずっとずっと怖かったと思う。


新しい人生かぁ、一体どんな人生になるんだろう。
今度は私がお姉ちゃんなんてどうかな、凛お姉ちゃんを参考にきっと良いお姉ちゃんになるよ。
麟太郎程すごいやつにはなれないかもしれないけど、きっと有名になって皆に気付いて貰うんだから。

KANOちゃん、魅空、次の人生でもまた友達になってくれるかな?
友達になったら、きっとまたゲーセンに行こうね。今度こそ私がクレーンでゲットするんだから。
それでまた、一緒に笑ってくれたら嬉しいな。

お父さん、お母さん、お米作りはいいけど、あんまり無茶しちゃダメだよ?
私はここでさよならだけど、二人は絶対長生きしてよね。
親不孝者でごめんなさい。でも、もう一人の私は絶対親孝行するから。
これからを楽しみにしててよね。

色々あったけど、記憶の中の皆、いままで本当にありがとう。
皆と一緒に居た時間はどうやら短かったけど、本当に楽しい時間だったよ。

光って結構温かいや。

それじゃあね。ばいばい。


女性の胸の中で、光が静かに瞬き、消えていった。
これから彼女はどういった人生を送るだろうか。
きっと今生よりは良い人生を送るのではないだろうか。

どうかきっと、新しい人生を歩む彼女を見つけたら、仲良くして欲しいと切に願う。

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